憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……や、やだなあ。何言ってるんですか、先輩。あたしは、尚と付き合ってるんですよ!」
「そうね」
「だから、千秋なんて関係ないです」
「嘘吐くな、馬鹿」
ぺしんと容赦なく頭を引っ叩かれた。
「……すみません」
思わず謝れば、先輩は耐え切れないといった様子で声を上げて笑い始めた。ヒーヒーとそれは苦しそうにお腹を抱えて。
「真知って、ほんっとーに嘘が下手よね」
「よく言われます」
「でも、それがあんたの長所であり、強みだわ」
「嬉しくないです。損ばっかり」
「あら?そんなことないでしょう。だってそのお陰で、あたしも、それに尚君だって、心置きなく真知のことを信じてあげることが出来るんだもの」