憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
*
先輩の言葉の意味が分からず、あたしは思わず首を傾げた。

「真知は、どうして尚君と付き合い始めたの?まあ、確かに尚君はずば抜けて格好良いし、優しいし、将来有望って感じだけど……、真知らしくないわね」

「それは」


尚の氷のような視線を感じてぞくりと背筋が冷える。
すみません。どうしても、それだけは言えません。大体にして、あたしだって、この契約の本当の理由なんて知らないのだ。

黙りこくるあたしに、先輩は小さく溜息をついた。

「まあ、いいけど」

先輩は多分、勘違いしてる。
あたしが落ち込んでる理由。千秋と純子が付き合い始めたからだって、きっとそう思ってる。

違うんです。
思わず口をついて出そうになる言葉をぐっと飲み込む。
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