憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

今、まさに悪役のあたしに、その言葉はずしりと響く。

「紗雪先輩」

「ん?」

いつもの刺々しさはない。
これも、先輩の一面なんだなとこっそり思う。

「ありがとうございました」

「……なによ、別に。大したことしてないじゃない」

戸惑いの表情を浮かべている先輩。
張り詰めていた自分の気持ちが、少し楽になった。あの時の絶望感はまだ胸の奥でくすぶってはいるけど、大分マシだ。
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