憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「千秋に連絡したの」
「出来る訳ないじゃん」
あたしはストローをがじがじと噛みながら尚をじとりと見つめた。
「俺は千秋と向き合えとはいったけど、特攻して自爆しろといったつもりないんだよね」
「うっさいな!わかってるよ!」
思わず声をあげてしまい、周囲の注目を浴びてしまった。
顔を赤くして俯くあたしに、尚がわざとらしく肩を竦めた。
「でもまあ、正直真知がここまでやってくれるとは予想外だったな」
「……なによ」
「全てが悪い方向に向かったわけじゃない」
その言葉に、あたしは目を丸くした。尚はコーラに口を付けながら、その口元をニヤリと吊り上げる。
「紗雪さんは、知っていた。純子のこと」
ごくんと、ジュースを飲み込んだ。
純子に負けるんじゃないわよと、去り際に言った紗雪先輩。
純子の本性に気づいているのかと思ったけど、よくよく考えてみれば、レンアイ事で負けるなと言いたかったのかと考え直したばかりだった。