憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ホームで修羅場を繰り広げるなんて、真知って結構怖いね」
くすっと笑いながら尚は言った。
あ、そうか。
あたしの中で、納得がいく。ホームで千秋と喧嘩したとき、紗雪先輩は外で話を聞いていたのかもしれない。
先輩は、きっとあの場所から飛び出したあたしのことを追いかけてきてくれたんだ。あんな風に偶然を装って。
「でも、それをなんで尚が知ってるの?」
「メールで。紗雪先輩とは仲がイイし」
「なにそれ!」
あたしの知らない場所で、情報が錯綜していることに眉を寄せる。
あたし、結構渦中の人物のはずなのに、何も知らない。
「紗雪さんも、案外お人好しなんだよ」
尚の口から飛び出した、予想外の言葉にあたしは瞬きを数度する。