憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「嫌いじゃない」
「……へ?」
胸の奥がもやついた。
あれ?なんだこれ……。
急に押し黙ったあたしに尚が、「なに、嫉妬?」と、楽しそうに言うものだからあたしは全身全霊で否定した。
「まあ……。場合によればあれはお節介とも言えるけど」
「ねえ、一体紗雪先輩に何を言われたの?」
「聞きたいの」
あたしは渋々と頷く。
「真知は、昔から千秋のことがずっと好きで、その千秋が純子に騙されるのを黙って見ていられないみたいだ……と、紗雪先輩は考えたみたいだね」
「ゲホッ、うえっ……ちょ、げほっ」
「汚い」
ダンゴ虫でも見るような目であたしを見つめる尚。ていうか、紗雪先輩もなんてことを尚に言うの!?
あたし達が偽装カップルだからいいものの、これがそうでなかったらかなり面倒臭いことになってるよ。