憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「嫌いじゃない」

「……へ?」

胸の奥がもやついた。
あれ?なんだこれ……。

急に押し黙ったあたしに尚が、「なに、嫉妬?」と、楽しそうに言うものだからあたしは全身全霊で否定した。

「まあ……。場合によればあれはお節介とも言えるけど」

「ねえ、一体紗雪先輩に何を言われたの?」

「聞きたいの」

あたしは渋々と頷く。

「真知は、昔から千秋のことがずっと好きで、その千秋が純子に騙されるのを黙って見ていられないみたいだ……と、紗雪先輩は考えたみたいだね」

「ゲホッ、うえっ……ちょ、げほっ」

「汚い」

ダンゴ虫でも見るような目であたしを見つめる尚。ていうか、紗雪先輩もなんてことを尚に言うの!?
あたし達が偽装カップルだからいいものの、これがそうでなかったらかなり面倒臭いことになってるよ。
< 228 / 533 >

この作品をシェア

pagetop