憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
尚は、フゥーっと紫煙を吐き出した。
灰皿には既に一パックくらいの吸殻が置かれている。見かけ王子なくせして、飲酒喫煙大好きなんてとんだ不良王子だ。
「勿論、千秋や真知のことを気に掛けてるからこそでしょ。けれど、……それ以上に紗雪先輩は、QSの秩序を崩されたくなかったんだろうね」
「え?」
「組織なんて、所詮人間がつくるものだからね。小さな綻びが致命傷になることなんてザラだし」
「どうして、そこまで……」
「更夜さんが大切にするものだからだろ」
あたしは、驚きに息を呑んだ。
頬杖をついて、紫煙を目で追う尚を見つめる。
『…守るためには、手段なんか選んでられないの。その為だったら、喜んで悪役にだってなるわ』
そういって口角を上げた紗雪さんが脳裏に浮かんだ。