憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
項垂れて黙りこくる千秋に、小さく溜息をつきつつ、部屋に置いてあるミニ冷蔵庫を開く。
「……千秋もなんか、飲む?」
「何があんの」
「ビールに、梅酒に、チューハイに…」
「全部酒じゃん」
ようやく、その顔に笑みを浮かべてそう言った。
「じゃあビール」
「はいよ」
ぽんと、千秋に缶を放り投げた。
あたしはチューハイを手に取り、プルタブを開ける。
プシュ、という音が小気味いい。
ごくごくと酒を喉に流し込みながら、すでにほろ酔いの頭で考える。
こんな感じで、よかったっけ。あたしだけが千秋の気持ちを知ってしまって、あたしだけが昔と違う状況に置かれてしまったから。
不自然な態度を取ってしまっていないか少し不安だった。
「なあ、真知……」
「なによ」
……恋愛相談?そんなものなら他を当たって欲しいものだ。
流石に協力してやる気には全くならない。うわ、あたし性格悪。
けれど、千秋から出てきたのは意外な言葉だった。