憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「さすが、紗雪先輩だね……」
「まあ、彼女にはこれ以上関わってもらうつもりないけど」
「ええ!?」
てっきり、純子の本性を知る紗雪先輩にあれこれ手伝ってもらうのかと思いきやそうではないらしい。
尚は不敵に笑う。
「更夜さんを敵にまわす必要がなくなった。これだけで充分だ」
「……あ、」
紗雪先輩は、QSの副委員長だ。
更夜先輩の信頼が最も厚いし、全体に顔の効く存在だ。
更夜先輩に不信を与えてしまえば、尚といえどもこのホームで仕事をすることが出来なくなる。そうなれば、ますます純子に対抗する術がなくなってしまうだろう。
「真知の猪突っぷりが、ようやく日の目を見れたようで嬉しいよ」
「そりゃどうも!」
「そう不貞腐れないでよ。本当であれば別に、QSに影響を及ぼさない限り、千秋が誰と付き合おうが紗雪さんには関係なかったはずだし。けれど、真知の感情任せの説得が、彼女を動かしたんだ」
"俺には、とても真似出来ない"
そう言って、尚はその口元に笑みを浮かべた。