憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

のそのそと仕度をして、家を出る。
ちらりと千秋家を見るもやはり千秋のバイクはなかった。

その時だ。
がちゃりと玄関のドアが開き、千秋ママが出てきてポストから新聞を抜き出した。ぱちりと目が合う。

「真知ちゃん!」

「おはようございます、おばさん」

どこかホッとしたような表情を浮かべるおばさんに首を傾げる。

「おはよう。ねえ、真知ちゃん。いきなりこんなこと聞いてごめんね。千秋なんだけど……、最近何かあったかしら?」

「え、どうして?」

頬に手を当てて少し哀しげな表情を見せる。
美人なおばさんがやると、なんともいえない色気があるなァ、なんてどっかの親父のようなことを考えてしまう。
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