憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「……っ、ごめん……」

鼻の奥がツンと痛い。思わず涙が出そうになるのを、ぐっと堪えた。
千秋は、あたしが謝った事に対してとても不満そうな顔をした。

「俺に……、謝ってるの?」

「他に誰がいるのよ」

千秋は一瞬表情を固めて、あたしを見つめたあとに、"純子"と、そう呟いた。
あたしは千秋から紡がれたその名前に自然と身体に力が入るのを感じる。

「なあ、真知」

千秋はゆっくりあたしの名前を呼んだ。その声に、先程まで千秋が纏っていた怒りは感じられない。
ゆっくりと千秋の色素の薄い瞳を見つめる。

「真知、俺のこと応援してくれてたよな」

「うん」

「相談した時も……、一緒に考えてくれてたよな」

「……うん」

悲し気な色を帯びた瞳に、情けない顔をしたあたしが映る。そんな表情を、あたしがさせてしまってるんだということが、とても辛い。
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