憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「なのに、どうしてこんなことになってんだよ。いきなり、理由もなく純子に掴みかかっておいて、話を聞けって。理解出来るわけないだろ」

「理由なんて」

そう簡単に言えるわけないじゃない。

言ったら、あんた絶対に傷つくでしょう。
それがわかりきっていて、どうして躊躇いもなしに全部をぶちまけられるというのよ。

ぎゅっと掌を握り締めた。

「信じたいだけなんだよ、俺は……」

けど、千秋自身も戸惑っている。
声は少し上ずっていた。

「あたし、知っちゃったから」

「……何を?」

「ほんとうの純子を」

千秋は怪訝そうな顔をした。
あたしの言葉の意味が、よく理解出来ないみたいだ。

誤魔化すことなんて無理。
あたしは尚みたいに、上手に言葉を操る術を持たない。
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