憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
黙り込んだあたしを見て、尚は小さく含み笑いを浮かべる。
不意に、手元にあったファイルから数枚の紙を手に取りあたしに向けてそっと揺らした。
思わず目を見開く。
それは、少し前に尚が差し出した"証拠"だった。そこには、純子達が各々好き放題吐き出した言葉が載っている。
そのまま見せたところで千秋は信じないだろうけど、真実へ導くためのきっかけには充分なり得る。
この状況ならば。
……けれど。
「大丈夫、そんなもの必要ない」
―証拠データをちらつかせて脅してやるか、もしくはこのまま黙って状況に任せるか。
尚は前に、こんな選択肢をあげた。
どちらも良い方法でないことなんて、頭の良い尚は始めから全部分かっていて。
それでもあたしに問いかけた。