憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
勿論、あたしだって首を横に振ってこの案はなくなったけど。
今この状況になってようやくあたしは理解する。
尚は、あたしという人間が行動を起こす"きっかけ"を提案したに過ぎなかったのだ。
下手な小細工も、証拠も、意味をなさない。
あたしは変化球の投げられない、直球勝負の人間だと知った上で。
「……ホント、わかりにくすぎでしょ」
「大丈夫か?真知……、さっきから何をブツブツと……」
吐き捨てるように言って、尚を睨む。
当の尚は、長い足を綺麗に組みながら、涼しい顔して微笑んだ。
腹が立つ。
けれど、どこか喜ぶ自分って絶対に毒されてる。
『生意気なこと考えるなよ。真知に出来ることなんて、ただ真っ直ぐにぶつかっていくことだけだろう』
心の声が聞こえるみたいだ。
結局、尚がいいたいのは単純にそれだけ。
なんてやつなの。