憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「あたしは、千秋を傷つけるためにこんなことをしたんじゃないよ」

「……真知」

やっと千秋が、あたしの目を心から真っ直ぐ見てくれた気がした。

証拠なんていらない。
あたしはただ、信じて欲しかったんだ。

千秋に。
ずっと一緒にいて、ずっと一番大好きだった幼馴染に。

千秋は、どこかムっとした表情を浮かべながら小さく肩を竦めた。

「そんなの知ってるさ」

「え、」

「何年一緒にいると思ってんだよ、馬鹿」

驚いて千秋を見ると、千秋は恥ずかしそうにあたしに合わせた視線を外しながら言った。
ようやく、千秋のその表情から曇りが晴れた。

ゆっくりと微笑む千秋。
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