憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

スッと立ち上がって、千秋がゆっくりと尚の前に立つ。

「ヒサ」

急に声を掛けられて、尚はその切れ長の目をぱちぱちと瞬かせた。

「何」

「俺、……見誤ってなんてないから」

驚いた顔をしている尚に向けて、千秋は困った様に笑う。尚の表情をこんなにも変える事の出来る人間もそうそういない。
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