憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「真知のことは勿論、尚のことだって信じてる。俺にはくだらないことなんかじゃないよ」
「……」
あの尚が、返す言葉を言いあぐねている。
あたし以上のどストレート少年は、尚の引く境界線なんて気づかない。
自然とそのボーダーを飛び越えて、陽気に挨拶するようなやつなんだ。
それに打算も何もない。
だからこそ尚は、沢山いる人間の中で、千秋には偽り無い自分をさらけ出すことが出来たんだろう。
きっと、尚にとっても千秋という存在は大きいに違いない。
「だから俺……、やっぱり純子も信じたいんだ。今見ている姿が偽者だって言うんなら、ほんとうの純子を知りたい」
"好きだから"
そう、ぽつりと呟いた。
何を言えっていうの?
ここで、この千秋の想いをどう覆せばいいっていうの。