憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
大学構内のカフェテリアで、少しだけ残ったアイスコーヒーをズズズッと一気に飲み干した。
どんよりと重たい雲に覆われた空は、今にも泣き出しそうだ。
6月も後半を迎えるけれど、まだまだ梅雨は明けそうにない。
腕時計を見れば、午後16時。
週末にあるQSの会議までに資料を用意しておかなくちゃ。また、紗雪先輩に怒られてしまう。
テーブルに広げていたレポートや本を鞄にしまいながら、ふと耳に入ってきた話し声。
「さっき、千秋君と純子見かけた!相変わらずお似合いすぎて二度見しちゃったよ」
「ああ、あのふたり付き合ってるんだよねえ」
調度、あたしの後ろに腰掛けた女の子ふたりが話題にしているのは千秋と純子のことだった。