憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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ホームでは、ノートパソコンを片手でいじりながら優雅に紅茶に口をつける尚だけがいた。
「……尚」
「ああ、真知やっと来た、て、何その辛気臭い顔。ただでさえ梅雨で湿気ってるってのに、これ以上この部屋をジメジメさせるのやめてくれる。きのこはえるから」
相変わらず辛辣な言葉を放つ尚に肩を落としながら、席をふたつ開けて腰掛ける。
「結局、あたしは何も出来なかった」
千秋に事実を突きつけたはいいものの、結局は千秋にとってお節介だったのかもしれない。
何も知らなければきっと、千秋は初めて本気で好きになった彼女と疑うことなく付き合っていられたのに。
結局、外野のあたしは、これ以上どうすることも出来ない。
ただ見守ることしか。