憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「あの単純な男は、真知に結果なんて求めてない。そんなものよりも、真知が自分の為にお節介を焼いてくれた事実のほうが嬉しいはずだよ」
「……尚」
「別に俺は。千秋の気持ちなんて、分かりたいワケじゃないけど。あいつも単純だからさ」
眩暈がした。
ざわざわと、心の奥がうるさい。
駄目でしょう、これ。
反則だよ。
あたしは、尚と契約を交わしただけの、偽物の彼女なのに。いちいちこんな風にドキドキしていたら。
「真知?」
何も答えられない。
尚の、まるでつくりモノみたいに整った顔がゆっくりとあたしに近づいてくる。さっきまで、カップの縁をなぞっていた指があたしの頬に触れた。