憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「震えてる」
「!」
電撃のような"何か"が、尚の触れたところから、ビリリと身体中を駆け巡った気がした。
「……ぎゃっ!」
反射的に、あたしは思い切り尚から飛び退いていた。
そんなあたしに対して、尚は不審者でも見るような目を向けてくる。
おまえのせいだよ、おまえの!
そっと自分の頬に触れれば、じわりと熱い。
間違いなく、今あたしの顔は真っ赤だ。
その時、何の前触れもなく、ドンッとまるで蹴破るような音を立てて扉が開く。驚いて振り返れば、そこに立っていたのは純子の取り巻きである美香と多恵だった。
息を荒げ、まるで般若のような形相であたし達を睨みつけた。