憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「何か用?ここは、関係者以外立ち入り禁止なんだけど」
尚が興味無さ気に言う。
多恵は、ずかずかと一直線に尚の元へと歩み寄る。
そして、何の遠慮も無しに、グイと尚の首元を掴み睨みあげた。
「ひ、尚……!」
「随分卑怯な真似してくれるじゃない」
「何それ。俺は何もしてないけど?」
澄ました顔でさらりと言い、視線をあたしに向ける。
誤魔化されていると感じた多恵は、ますます激昂してついには右手を振り上げた。
「だ、……駄目っ」
あたしは思わず飛び出して、横から多恵の身体を押さえに掛かる。
美香はあたしを引き剥がそうとするし、多恵は暴れるしで、なんだか無茶苦茶だ。
「痛っ、いたたっ!美香、髪引っ張らないでー!」
「うるさい、馬鹿真知!あんたこそ、多恵を離しなさいよ!!」