憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

すったもんだの末、ついにはバランスを崩してその場に三人で倒れこんだ。
尚の冷ややかな視線がつらい。

「あんたが裏にいたことなんて、全部分かってんのよ!」

ふたりは、打ちつけた身体を庇いながらゆっくりと立ち上がる。

何があったのだろう。
ずっと、裏でこそこそと動くような彼女達が、こんな風に怒鳴り込んでくるなんて。

純子は一体どこに。
不機嫌オーラを一切隠さずに、尚がふたりを見下げる。

絶対零度の視線に、ぎくりと肩を揺らしつつも、多恵は必死に己を奮い立たせるように、こちらを睨みつけた。

「千秋君にデタラメなこと吹き込んで、純子との仲をかき回して一体どういうつもり!?」

「……デタラメって、あんたね!」

「全部上手く言ってたのに!!」

声を荒げるふたりに対し、尚は小さく笑みを浮かべた。
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