憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
***
行動を出て、辺りを手当たり次第に見て回る。
走りながら思う。
千秋の手を引いて、あの場所から一緒に連れ出してしまえばよかったかな。
息を切らしながら、ぼんやりと考えた。
昔、近所の悪ガキに苛められていたとき、助けてくれたのはいつも千秋だった。高いジャングルジムから颯爽と飛び降りて、あたしの手を引いて連れ出してくれた。
その時から、あたしは本当に千秋をヒーローだと妄信していたんだ。
実は、カッコよく着地した瞬間に右足首を捻挫していたこと。あたしはそれを知った時、とても笑ったけど(そして千秋は不機嫌そうに口を尖らしていた)
心の底からこの人が好きだと思った。