憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ひ、尚!」
「何さっきから一人で百面相してんの。キモイ」
「……酷っ」
頭痛でもするのか、尚は頭を押さえながらイチョウ並木の道端に置かれたベンチへと腰掛けた。
「ずっとここにいたの?探しちゃったよ」
あたしの問いには口を閉じたまま、気分悪そうに瞳を閉じている。それでも煙草を吸おうとするものだから、あたしは慌ててその手からライターを奪った。
「返せよ」
「駄目!そんな具合悪そうなのに、煙草吸うなんて」
尚は、心底鬱陶しそうにあたしを睨むけれど、ようやく諦めたのか小さく溜息を吐いて煙草をポケットへとしまった。