憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

そっと尚の横に座る。
暫らくの沈黙。

「……はあ」

「なによ、その深い溜息は」

黒曜石のような瞳は、戸惑いに揺れている。
こんな彼を、正直初めて見る。

いつもは、何事にも迷うことなく、まるで全てを見透かしているかのようなのに。

「そんなにジロジロ見ないでくれる」

「だって珍しいもん。尚の、そんな顔……」

「……?何それ」

怪訝そうに眉を寄せながら、小さく首を傾げた。
自分の様子に、ちっとも気づいていないんだ。
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