憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

あたしは、自分の矛盾に気づいている。
勢いでだって、本当は言えるわけないのだ。本当は。

だって、勢いで言ってしまえたのなら、千秋に対して、とっくのとうに好きだと告白してしまっているはずだから。

…それなのに。

(抑えきれなかった、なんて…)

尚の横顔を盗み見て、ドキリと心臓が飛び跳ねた。

やばい。
あたし、どうしよう。

「真知、尚」

途切れかけたあたしの思考回路を繋いだ声。
驚いて後ろを振り向いた。

「千秋、なんでここにいるの!」

信じられなくて、思わず大声を出してしまった。尚も予想外だったようで目を見開いている。

「さっきは、ごめんな」

当の本人は、事もなげに、務めて明るくそう言う。けれど、千秋が無理してることなんて、嫌になる位に分かってしまった。
< 291 / 533 >

この作品をシェア

pagetop