憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
あたしは、自分の矛盾に気づいている。
勢いでだって、本当は言えるわけないのだ。本当は。
だって、勢いで言ってしまえたのなら、千秋に対して、とっくのとうに好きだと告白してしまっているはずだから。
…それなのに。
(抑えきれなかった、なんて…)
尚の横顔を盗み見て、ドキリと心臓が飛び跳ねた。
やばい。
あたし、どうしよう。
「真知、尚」
途切れかけたあたしの思考回路を繋いだ声。
驚いて後ろを振り向いた。
「千秋、なんでここにいるの!」
信じられなくて、思わず大声を出してしまった。尚も予想外だったようで目を見開いている。
「さっきは、ごめんな」
当の本人は、事もなげに、務めて明るくそう言う。けれど、千秋が無理してることなんて、嫌になる位に分かってしまった。