憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「仕方ないね」

ゆっくりと立ち上がり、あたし達を置いて歩き出す。

「ちょ、ちょっと尚!どこいくつもり!?」

驚いて、思わずその背に向かって声を掛ければ、尚は煩そうに眉を顰めながら振り返った。

「千秋、うちにおいでよ」

「「……えっ」」

あたしと千秋は同時に声を上げる。
尚が、自分の家に他人を呼ぶ…!?あの、自分のテリトリーは何が何でも死守する尚が。

千秋は、目をまん丸にして尚を見つめつつも、「いいのか?」なんて少し嬉しそうな声音で問いかけた。
やっぱり、千秋にとって尚は特別らしい。
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