憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「言っとくけど、尚は凄く飲むよ」
「……まじでか。じゃあ、これも追加しよう」
ワインの白をもう一本追加し、これ美味そうだな、とか良いながらツマミのチーズを物色する千秋をちらりと見た。
結局、ふたりして両手にビニール袋を下げながら、タクシーに乗り込む
「凄い荷物だねぇ」
タクシーのオジサンの驚きの声に、あたしは苦笑いをする。
やっぱり、いくら何でも買いすぎた感は否めない。
―なに、考えてんのかな……。
千秋は、窓から流れる景色をぼんやりと目で追っていた。
その横顔を見つめながら、15年も一緒にいたくせして、千秋の考えている事がちっとも分からないことに、なんだか無性に悲しくなった。