憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
ななな、なに。どういうこと。
未だにこの状況を受け入れることが出来なかった。もしかして、もしかしなくたって、あたし失恋をしてしまったのだろうか。
「千秋、ねえ、千秋ってば」
ゆらゆらと千秋を揺らしてみるものの、突っ伏したまま顔をあげようとしない。
千秋は、5歳の時に向かいの家に引っ越してきた男の子だ。互いの両親が仲が良かった為にあたし達も自然と、一緒に居ることが多かった。
その関係は今現在進行中だ。
「千秋……、まさか、寝てるの?」
嫌な予感がした。
こいつ、酒はものすごく弱いくせに(大抵は、2時間かけてぶどうサワーをちびちび飲んでる)、今日はなぜだか初めからビールを4杯も空けていた。整った顔から、スースーと寝息が漏れている。
怒りがふつふつと込み上げてくる。
「この、馬鹿っ!」
傍にあったおしぼりを、ぺしんと千秋に投げつけた。