憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
閑静な住宅街に位置する誠東から、タクシーはどんどんと離れていく。
ワンメーターももうすぐ切ろうとしている。
一体尚はどこから大学まで通っているんだろう。
あえて電車じゃなくてバイクで通う辺りが、尚らしいけれど(……まあ、彼が満員電車に揺られている姿なんて想像出来ないな)
「着きましたよ」
「あ……、ありがとうございます!」
あたしは、多すぎる荷物によろけそうになりながら上を見上げた。
超高層マンション。
「ここ、だよね。いいんだよね」
「……ああ。住所に間違いはない」
以前、尚の実家?らしき家に連れて行かれたときは古めかしい洋館だったから、このギャップは凄い。
ガラス張りのエントランスに二人で恐る恐る入ると、そこには警備員。
入り口に設置されているオートロックから、メモ帳に書かれた4701のボタンを押した。