憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ああ、遅かったね」
尚の声だ。本当に、こんなところに住んでいるのね。
同時に自動ドアが開いた。
擦れ違い様に、スラリと背の高い男性がエントランスから出て行く。顔半分を隠す大きなサングラスを掛けてはいたけれど、その洗練されたスタイル、絶対にどこかで見た事がある。
「ね……ねえ!わかった!今擦れ違ったのって、人気モデルの相田律じゃない!?」
「だよな!凄い!!本物初めて見た!」
「現代のガラス王子!感激……!!」
あたし達は唐突に現れる芸能人に浮かれながら、エレベーターに乗り込む。
静かに上がるエレベーターの中で、耳がキンと痛んだ。