憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……」
「だから、真知はいつも飲みすぎなんだよ」
「……だって、うぅ……お願い千秋、もう少しゆっくり運転して」
千秋の運転するバイクの後ろで、あたしは朝っぱらから死にそうだ。小さな揺れが酷く荒れた胃を刺激する。
「うっぷ」
「おい!吐くなよ!?絶対吐くなよ!!」
とてもじゃないが、電車で学校へ行く気力も、原付を運転する気にもなれなかったから、ありがたく千秋の背中に掴まらせて頂いている。
「……こないだのタクシー代、これでチャラにしてあげてもいいよ…」
遺言のようにそう呟いて瞳を閉じたあたしに、千秋は小さく溜息をついた。
「はいはい、どうもありがとさん」
「お互い……さま……」
ああ、もう本当に。
どうしようもない自分に呆れる。これでこいつのことが好きだなんていうんだから、自分のことながら呆れる。世の中の恋する女子達に、レンアイを舐めるなと非難されてもおかしくない。