憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
尚の言葉に、千秋はえ、と驚いた様な声を出した。
「なに」
「そんな心配すんなよ、ヒサ!大丈夫だって」
「なんの心配だよ。意味分からない」
ぺしりと尚が千秋を叩いた。なんか腹立つ。
「真知のことは、好きだよ。大切な幼馴染。これからもずっとそう」
優しい声音。
ああ、そっか。
「ヒサのことも勿論好きだ」
「……気持ち悪いこというな」
酷ぇ、千秋は言った言葉と裏腹に、嬉しそうに夜空を見上げた。
あたしの中の、一つの不安定な気持ちがコトリとあるべき場所に収まった、そんな感じがした。
ツイと涙が一筋だけ流れる。
それはコメカミを伝ってブランケットを濡らした。
悲しかった。
けれど、どこかで嬉しいと、そう思えた自分に驚いた。