憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
***
「真知、おい、真知……」
「んう」
―誰だよ、こんな朝っぱらから。耳元でがちゃがちゃうるさい。
「駄目だ、起きねぇ。どうしよ、ヒサ」
「鼻でもつまんだらどう?」
「それ名案」
「ついでに口も」
……。
「死ぬって!」
あまりに理不尽な提案を耳元で交わされれば、飛び起きるしかない。
「おはよ、真知」
千秋は、変わらない爽やかな笑顔をあたしに向けた。あたしはそれに一瞬息をつめたけど、すぐにいつもどおりおはようと返した。