憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……いい匂い」
「パン焼けたぞ」
昨日の夜に、飲み食いしっぱなしで寝たはずの部屋は、朝起きたら綺麗に片付けられていた。
「誰が片付けたの?もしかして妖精?」
「いつまでもすっ呆けてるやつには朝食抜き」
「すみません、ありがとうございます。手伝います!」
あたしは慌てて立ち上がって、キッチンに立つ尚の元へ行く。
「おはよ、尚」
「はよ」
なぜか尚はあたしの顔を真正面から見ずに、嫌そうに視線をずらす。
なんだろうと首を傾げていると後ろで千秋が小さく笑った。
「覚えてなよ、千秋」
「ほんっとごめん、ヒサ許して」
なんだこいつら。朝からイチャつきやがって。
あたしが不審気な視線を送っていると、それに気づいた尚が誤魔化す様にあたしに目玉焼きを押し付けてきた。