憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「真知……、変わったよな」

「はぁ!?」

「うん。悔しいけど、ヒサの影響だよな、やっぱり。でも」

あたしは何だか恥ずかしくなって、大袈裟に手を振って否定してみせたけれど、千秋には通用しなかった。

「ヒサも、変わったな」

予想していなかった名前が千秋の口から飛び出してきて、驚く。

尚が、変わる?
ポカンとしていたら、千秋が呆れた目をしてあたしを見た。

「気づけよ、彼女だろ」

契約の、なんだけど。

千秋にたった一つ言えないでいる事実。
罪悪感でずきりと胸が痛んだ。

「俺が純子と話してた時、まさかあの状況でヒサが出て来てくれるなんて思いもしなかった」

「……確かに、意外だったわ」

「でも、もっと驚いたのはさ、ヒサの言ったこと」

千秋は何かを思い出したように嬉しそうに笑う。

「俺、実際に純子が何をここまで真知やヒサを怒らせることをしてたのか詳しいことは知らないけど」

あ、そうか。
そういえば騙されてるとは言ったけど詳しくは知らないんだ。
言おうとしたら、尚に止められたから。
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