憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
あたし達の大学では、夏の始まりに向けて一つの大きなイベントがある。
その名も『誠夏祭』
テスト週間が終わると同時に構内で行われるこのお祭りは、いってしまえばただの気の早い納涼祭りなのだけど、テストに縛られていた学生達は皆一様に楽しみにしている。
勿論、大学内の公式的なイベントを取り仕切るQuality Seasonの大切な仕事だ。テスト勉強とイベント準備で、委員メンバーは皆一様にピリピリとしたムードなのである。
「失礼しまーす」
委員のホームの扉を開ければ、そこにいたのは純子だけだった。
彼女に会ったのは、数日前に講堂で言い合ったのが最後だ。あれから、純子は数日大学を休んでいたらしい。
佐伯千秋と別れたことがショックで……、なんていう下世話噂が囁かれていたことも、耳にしていた。
純子は、入口にいたあたしと尚に気づくと冷めた瞳をちらりと向ける。
「更夜さん達は?」
「理事長室に、予算案を提出しに行ったわよ」
「ふうん、そう」