憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

早速、嫌な空気だ。
話している内容はいたって普通なのに、言動の端々に冷たさが滲んでいる。

「こないだは、どうもありがとうね」

「え?」

純子は小さく笑みを浮かべる。"ありがとう"なんて、嫌味に決まっている。長い髪をゆっくりとかき上げながら、じっとあたしと尚を睨む。

「あなた達みたいな人間、大嫌いよ。もう関わりたくないわ。こりごりよ」

あたしは呆気にとられて言葉を失う。
散々引っ掻き回したのは純子なのに、どうしてそんな口がきけるんだろう。正直理解出来なくて、ただ彼女を見つめるだけだ。
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