憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……あ、あ、、ああー!」
思わず大声をあげたあたしに、周りの人達が一斉にこっちを振り返った。
「真知、馬鹿!恥ずかしいだろ!」
千秋が顔を赤くしてあたしを睨む。
あいつだった。
あの日の、あの無礼な男。本当に、この大学の生徒だったのか。
確か名前は、"オカザキヒサシ"
「なんだよ、真知。知り合いか?」
「……や、別にそういうわけじゃ」
視線で射殺す勢いであたしが岡崎尚の横顔を睨み続けていると、ふと彼がこちらを振り向いた。
バチっと、視線と視線がショートする。
けれど。
岡崎尚はまるで知らない他人のように、スッとすぐに前へと向き直った。
「……何よあいつ、超ムカつく」
あんな無礼なことをしておいて、もう忘れたっていう訳か。
酒の飲みすぎだかイラつきのせいだかわからないけれど、あたしの胃がキリリと痛んだ。