憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

田丸の講義する90分間は、永遠を錯覚してしまう位に長くて。10分もしないうちにあたしの瞼は閉じかけようとしていた。なんとか目を覚まそうと辺りを見渡しても、やはり皆同じようにうつらうつら頭を揺らしている。

……目の前の純子だけはカリカリと講義の内容をノートに書いていたけれど。

眠いなあ。
あくびをかみ殺しながらぼんやりと視線だけは田丸に向ける。

その時――

トスン、と肩に重みがかかる。
驚いて横を見れば、千秋があたしの肩を枕にしてスヤスヤと眠っているではないか。

「……ちょ……!」


重いんですけど。
払いのけてしまおうかと真剣に考えるも、ふと思いつく。これって喜ぶところなのか、と。こういう瞬間に乙女はトキメキを感じたりするものなんだ、きっと。

どうなの、純子。
目の前の彼女に問うてみたい。

それでもやはり近すぎる千秋に恥ずかしくなって、顔だけを反対側に向けてみる。
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