憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
紗雪先輩は更夜先輩を手招きする。手に持っていたビニール袋を千秋に渡しながらにこりと笑った。中を覗けば、そこには透明な瓶に入ったサイダーが三本入っていた。
「さし入れよ。今日は殆ど準備に追われてるんでしょ?花火が終わったらまた片付けで忙しいんだし、少し離れた場所でゆっくりしてきなさい」
「ああ、それがいい。俺たちは原さん達にこれを渡してからここの誘導を代わるから」
驚いて思わず千秋と顔を見合わせる。
「だ、大丈夫です。そんな、先輩にやらせるなんて……」
「いいのよ。あと少しだし、更夜と一緒にやっておくから」
引きとめようとするあたしの手を、更夜先輩はやんわりと遮りながら微笑んだ。