憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「はァあ…、疲れた」

大成功で幕を閉じた誠夏祭。
花火の余韻を味わう間も無く、すぐさま会場の片付けに追われていた。このお祭りが終われば、誠東学園大学は夏休みに突入だ。

夜も22時を過ぎて、ようやく開放されたあたし達は、くたくたになりながらホームを出た。

「おまたせ」

尚がバイクを転がしながらやってくる。
家が近いあたしと千秋は、今日は徒歩だ。

誠夏祭のメインストリートだった校門までの道は、既に祭りがあったことを疑いたくなるくらいにゴミひとつなく綺麗に片付けられている。立つ鳥後を濁さずが我が委員会のモットーだ。

メインの仕事をひとつ片付けたという開放感で、足取りはとても軽い。鼻歌を歌いながら前も見ないで空に浮かぶ月ばかりをみていたのも悪かった。
< 376 / 533 >

この作品をシェア

pagetop