憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「おい、真知!前!!」
「……え?」
呼ばれた声で後ろを振り返った瞬間、あたしは何かに大きく躓いた。
「きゃっ」
ズデンと、校門の前で、まるで昔のギャグ漫画のようにずっこけてしまう。
いたた、と腰をさすりながら後ろを振り向けば、なんとそこにはあたしと同じように倒れている女の子がいた。
どうやら、校門前で座り込んでいたようだ。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
「ったく、真知は」
千秋は、溜息を吐きながらその子の手を引いて立たせる。
「わ、私のほうこそ、すみません。こんなところでしゃがんでたから」
消え入りそうな声。
驚くのは、その身体の線の細さだった。暗闇でも浮き立つ肌の白さは多分、月明かりの所為だけじゃない。
「……ッ」
「え?」
尚の様子が、どこかおかしい。
息を呑んで信じられないという顔をして、彼女を見つめている。