憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

これだけは分かる。
この岡崎尚とかいう男、あたしにとっては非情に相性のよろしくない男なんだ。こいつと関わると碌なことがない。


「黒崎君、聞いているのかね」

「……はい……」

「全く、君というやつは、出席日数は足りないし来たと思えば授業中に騒ぐし……」

「す……、すみません……」


あたしは、教授室に呼ばれてお説教されている最中だ。

大学生にもなって。
千秋と言えば、純子と仲良く連れ立ってどこかに行ってしまうし、まさに不幸の連鎖。

「君には、少し反省が必要のようだな」

「ええ!?」

そう言って田丸は一冊の本をあたしに手渡す。

なんだこれ。
分厚い本をぱらりと開く。その瞬間にくらりと眩暈がした。

「一週間でこれをレポート用紙に纏めてこい」

「……無理です」

「無理じゃない、やるんだ」

「だって、これ……、日本語じゃないですよ」

「おまえ国際科だろ」

有無を言わさず、あたしに本を押し付ける。
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