憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

***

「っぷ」

「なによ」

「……変なTシャツ。そういうのってどこで買えるの」

「うるさいなぁ、別に自分の家でどんな格好してたっていいでしょ」

高校の修学旅行で京都へ行ったときに、路面店で千秋と一緒に買ったパロディTシャツを思わず両手で隠した。

「結衣ちゃんに何も言わずに来ちゃったけど、大丈夫かな」

「平気。結衣は、一度寝ると朝まで起きないから」

平然と言う尚をちらりと見る。
尚が結衣ちゃんを嫌っているようには感じられない。

あたし達は、近くにある誠東公園のベンチへと腰掛けた。夜更けの公園というのはどことなく不気味だ。
はい、と尚が自販機で買った缶コーヒーをあたしにくれた。
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