憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ごちそうさまでした」
手を合わせて、ぺこりと頭を下げた結衣ちゃんにお母さんは少し困ったように微笑んだ。ぱたぱたと足音を立てながら階段を上がる結衣ちゃんの後姿が見えなくなるのを確認した後に、ゆっくりとあたしを見上げる。
「結衣ちゃんは、いつまでうちに泊まるつもりなのかしら」
「……えっと」
「迷惑とか、そういうことを言っているんじゃないの。あの年頃を持つご両親は、このことをちゃんと知っているのかしら。今日で三日目なのよ」
強い口調で言われて、押し黙ることしか出来なかった。
確かに、夏休みとはいえ、17歳でこんなに外泊を続けていたら彼女の家族だって心配しているに違いない。
改めて、尚にも一度話しをしなければ。
そんなことを考えながら部屋に入ると、ベッドに座って携帯をいじっていた結衣ちゃんがパッと顔を上げた。どこか、不安気な表情。
「……ごめんね。おばさんに、怒られた?」
勘の鋭い結衣ちゃんに、内心どきりとしながら慌てて首を横に振った。結衣ちゃんは"そう"と小さく呟く。