憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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「あの、お客さま…、大変申し訳ございませんがそろそろ閉店の時間なのですが…」
テーブルに頭をくっつけて熟睡する千秋をぼんやりと見つめながら、無心で枝豆を食べていたあたしに、店員が申し訳なさそうにそう告げた。
腕時計を見て思わず「ぎゃっ、!」と小さく叫ぶ。
短針は、深夜2時を指していた。
いつのまにこんな時間に。見渡せば、今日は週の真ん中である水曜日ということもあって、客も殆ど残っていなかった。
「……千秋。帰るよ」
「んん、」
「いつまで寝てんの」
「ぁい」
ほんっとにムカつくなあ。
苛立ちのままに、ギュッと千秋の頬っぺたを思い切りつねれば、ようやく痛みで涙目になった千秋が薄っすら目を開いた。以前、意識は朦朧としているようだけど。