憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「ヒサも、ヒサだ。迎えに来るだろ?普通」

「なんであんたが怒ってんのよ」

「だってさァ」

あたし達のやりとりを見ていた結衣ちゃんが、プッと小さく噴出した。
思わず、千秋と顔を見合わせる。

「ふたりって、ほんとのきょうだいみたいね」

「10年近く一緒だからな。手の掛かる妹なんだよ。結衣ちゃんみたいな子だったら良かったんだけど」

「……んなっ!ちょっと、勝手なこと言わないでよ!!」

くすくすと笑いながら、目尻に浮かぶ涙を人差し指ですくう。

「ずるいなぁ」

「え?」

「ずるいよ。真知も、千秋も、すごく楽しそう。尚だって、そう。あんな顔するの、見たことがなかったもの」

千秋は、結衣ちゃんの隣に腰掛けた。
ぎしりとベッドが沈む。
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