憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
千秋がそっと結衣ちゃんにタオルケットを掛けた。それに口角を無理矢理持ち上げて笑みをつくりながら、ありがとうと呟く結衣ちゃんは、なんだか酷く追い詰められているように感じた。
邪魔にならないように、そっと部屋を出る。
「なあ、結衣ちゃん大丈夫なのか?」
「わからない。ねえ、千秋」
あたしの呼びかけに、千秋はこくりと頷いた。
「ヒサんち、行くぞ」
「うん!」
置手紙を残して、家を出る。ヘルメットを被りながら千秋のバイクに跨った。
「尚、入れてくれるかな」
「無理矢理入る!」
「……千秋、たまに頼もしいよね」
「たまには余計だから」
千秋は、小さく笑ってアクセルをふかした。